藤沢立石ハイツA棟

藤沢立石ハイツの所在はその名の通り、藤沢市立石一丁目にあります。小田急江ノ島線善行駅が最寄の駅で、善行駅から東方向に直線距離で800メートル程度です。神奈川県立の体育センターや藤沢翔稜高校などの文教施設が隣接する丘陵地に建設されています。 平坦地やなだらかな丘陵地の多い藤沢市ですが、環境はその特徴的な印象を持っています。

開発は日本新都市開発株式会社で、広大な丘陵地にA棟からG棟までの7棟の大規模なニュータウンです。 構造はプレキャスト壁式鉄筋コンクリート造で、該当のA棟は5階建て30世帯の中規模団地です。

竣工は昭和49年で旧耐震のマンションとなります。日本の高度経済成長真っ盛りの人口爆発に対応して造られました。 旧耐震の建物は、基本的には現在の耐震基準に適合していません。新耐震基準は想定される大地震に対して、倒壊又は崩壊する危険性が低いことが求められますが、旧耐震の建物はほとんどがこの基準をクリアーできません。

旧耐震なのに耐震基準適合証明が取得できる理由

藤沢立石ハイツA棟

しかしながら旧耐震の設計でも想定される大地震においても倒壊又は崩壊する危険性が低い構造形式の建物があるのです。それが「壁式鉄筋コンクリート造」で、藤沢立石ハイツはその構造形式の「壁式鉄筋コンクリート造」に該当するのです。 ただし、全ての壁式鉄筋コンクリート造が安全なわけでは有りません。安全性の確認には耐震診断でIS値が0.6以上であることが必用です。

旧耐震の建物を耐震診断すると、特別に構造に配慮した設計を除けばほとんどの建物でNGとなります。しかしながら旧耐震でありながら壁式鉄筋コンクリート造の場合では耐震診断すると逆にほとんどの建物が基準値をクリアーするのです。 くしくもこのことは阪神淡路大震災において実証されました。 

多くの建物に甚大な被害が発生した状況にあって、ほとんど無傷の構造形式が「壁式鉄筋コンクリート造」だったのです。この調査結果を踏まえ、国土交通省は高度で複雑な手法を経ることなく簡易的に実証できる方式を定めました。それが「既存壁式鉄筋コンクリート造等の簡易耐震診断法」と言われるものです。

なので、旧耐震の壁式鉄筋コンクリート増の住宅の耐震基準適合証明では「既存壁式鉄筋コンクリート造等の簡易耐震診断法」に準拠した耐震診断を行います。そのために設計図の閲覧が必要です。設計図は管理組合で保管しているので閲覧承諾をいただく必要が有ります。

藤沢立石ハイツA棟の現地調査

藤沢立石ハイツA棟

閲覧承諾は住宅のオーナーである売主を通して仲介会社の営業担当者が取ってくれます。 閲覧の承諾を取ることに苦労する場合もあります。利用目的を伝えればたいていは快く閲覧の承諾をしてくれることが多いですね。 藤沢立石ハイツも快く閲覧をさせていただけました。 有難うございました。 全ての管理組合が設計図書を全て保管しているとは限りません。中には管理状態が悪く、少ない設計図書をたよりに現地での実測調査のデータで行うこともありました。 

閲覧の結果判明したことは、プレキャスト鉄筋コンクリート造であることでした。壁式鉄筋コンクリート増には二つの施行方式があります。一つ目は現地で鉄筋を組み型枠を組んで現地でコンクリートを打つ「現場打ち造」と、二つ目は遠隔地の工場でコンクリートの壁や床板を作り、現地に運搬して組み立てる「プレキャスト造」が有り、「現場打ち造」は「躯体のコンクリート強度試験」を必要とします。 この団地は「プレキャスト造」なので「躯体のコンクリート強度試験」は不要です。

設計図を閲覧し、必要なところはデジカメにて撮影しました。そのあとで現地調査を行います。建物はA棟で敷地全体の一番東寄りに位置しています。 この当時の大規模開発は敷地が十分にあり、5階建ての低層の為に日照が前の棟の影響を受けることは有りません。建物の間隔も広く配置されていて、北側には廊下が無い構造なのでプライバシーは高いレベルで確保されています。小さな子育ての若い家族にはとてもいい環境だと思います。