上中里住宅4号棟

今回の審査対象住宅は、上中里住宅4号棟です。その名の通り磯子区の上中里に位置します。 磯子釜利谷街道の沿線にあり、すぐそばには磯子カントリークラブが隣接するとても緑の多い高台に位置しています。

依頼主は上大岡を拠点に不動産事業を展開する仲介会社様からでした。この依頼主様も耐震基準適合証明が旧耐震マンションで取得が可能なことをご存じなく、購入予定者様からの進言でネット経由でクランツ事務所にご連絡をいただきました。

旧耐震マンションの耐震基準適合証明をネット検索して行きついたところが幣事務所で、ご連絡をいただいた時点で対象物件が発行可能なものかどうかの事前判定をいたします。 事前判定はもっぱらネットを利用します。具体的にはストリートビューとグーグルアースを活用して壁式構造の外観上の特徴を観察して合致した場合に次のステップに進みます。 クランツ事務所は旧耐震マンションの耐震基準適合証明でネット検索をすれば出てくることから、多くのお問い合わせがありますが、この事前判定で対象外になることも少なくありません。

他のページでも述べておりますが、事前判定で壁式構造の外観上の特徴を備えている建物に限って次のステップに進みます。耐震診断の前提条件として構造設計図の閲覧が不可欠ですので、依頼人から管理事務所に設計図の閲覧承諾を取っていただきます。事前判定ではあくまで可能性があるレベルで、実際に確定するのは設計図を確認し、デジカメで撮影した設計データを基に耐震診断を行い、すべての条件をクリアーした時点で発行可能となり確定いたします。

設計図の閲覧と現地調査

上中里住宅4号棟

今回の不動産会社様は旧耐震マンションの耐震基準適合証明は初めてなので、実際の構造図の閲覧や現地調査に立ち会うことになりました。 現地で待ち合わせをして管理事務所にて設計図の閲覧をさせていただきました。まずは施設管理担当の理事にご挨拶をして、今回の要請の趣旨説明を行いました。 上中里団地は、高度経済成長期に急激な人口増加に伴って発生した住宅不足を解消するために、旧住宅公団が大規模開発した古いニュータウンです。 ニュータウンという言葉だけでも古いことがわかりますね。今では死語になっていますから。

建物外観からもわかるとおりに典型的な壁式構造のマンションです。設計構造図によって詳細な構造スペックが判明しました。壁式構造には大まかに二種類の構造形式があります。 一つはプレキャスト壁式鉄筋コンクリート造でもう一つは現場打壁式鉄筋コンクリート造です。 上中里団地4号棟は現場打壁式鉄筋コンクリート造になります。

この構造様式は、耐震診断をクリアーすることと合わせてコンクリート躯体の強度が一定のレベル以上であることが求められます。なので設計図の閲覧の後の現地調査ではコンクリート強度試験を実施しました。 

コンクリート強度試験には、破壊試験と非破壊試験の二種類があります。破壊試験は対象の建物の試験体を実際に壁から切り取り、試験所に持ち込み圧縮試験にて結果を出しますが、現在居住中の住宅でこのような行為は困難なため、ここでは非破壊試験で行います。

非破壊試験はリバンドハンマー試験器を使用します。携帯用の試験器で俗称では「シュミットハンマー」と称し、今回も対象住居のメーターボックスのコンクリート壁面で実施しました。結果は十分に数値をクリアーしていることが確認でき、帰社後に実施した耐震診断にておすべての項目がクリアーできましたので、めでたく「耐震基準適合証明書」の発行ができました。