エミネンス二俣川

今回の案件は、エミネンス二俣川です。二俣川のネーミングですが、相鉄の二俣川からは南東方向に直線距離で2キロ以上の位置にあります、 保土ヶ谷バイパスの新保土ヶ谷インターにほど近く、左近山団地がご近所といえるところです。

依頼人は横浜市西区に営業拠点を置く不動産仲介会社様です。以前より案件の適合性の事前確認では何回もお手伝いをしていますが、実際に不動産売買の成約物件を担当させていただくのは初めてのことです。

開発事業主は大成プレハブ。施工も大成プレハブです。この当時、高度経済成長に伴う地方から大都市圏への人口流入によって引き起こされた深刻な住宅不足を解消するために、当時の住宅公団や地方公共団体の住宅供給公社が大規模な都市開発で次々とマンションを供給していきました。

そんな中で、民間レベルでも事業に取り組む団体が多くなりました。今回の二俣川エミネンスの開発主体もそうした民間の事業者です。大成プレハブの名前の通り、この事業者はこの時代の社会のニーズによって立ち上げられた会社といっても過言ではありません。

クランツ事務所が提供させていただいております旧耐震の壁式鉄筋コンクリート造には2種類の構造様式があります。一般的に鉄筋コンクリート造といえば、現地にて鉄筋を組み、型枠を組んでコンクリートを流し込んでつくる現場築造が一般的です。しかしながらこの工法では時間がかかります。それでは急激な人口増加に伴う住宅の供給には間に合いません。 そこで考案されて工法が「プレキャスト壁式鉄筋コンクリート造」と言われるプレハブ工法です。

この工法は、通常では現地にて行う作業(鉄筋工事・型枠工事・コンクリート工事)を専門の製作工場で行うことで時間短縮が可能です。あらかじめ工場にて作成した床コンクリート版や壁コンクリート版を現地に持ち込み組み立てていくので、時間を大幅に短縮できるのです。

この工法によるメリットはコンクリートの品質管理が高いレベルで確保できることです。ちなみに他方の「現場打壁式鉄筋コンクリート造」の場合では、現地でコンクリート躯体を築造するため、自然条件によってコンクリートの品質は大きく影響を受けているので、実際のコンクリート躯体の健全性の試験が必要です。要するに所定のコンクリート強度があるか否かの確認が求められますが、プレハブ工法の場合ではコンクリートの品質は担保されているとみなし、コンクリートの強度確認は省くことが許されています。

現地調査と耐震診断

エミネンス二俣川

前置きが長くなりましたが、管理事務所にて設計構造図の閲覧の結果、上記の通りの情報がわかり、プレキャスト構造につき、コンクリートの強度試験は不要となりました。

設計図の閲覧ののち、現地調査にて外観のチェックと室内からバルコニー外部の確認を実施しました。この管理組合も適切な修繕積立費の拠出により賄われる大規模改修工事によって、コンクリートの維持は適切に保全されていることが確認できました。

現地調査では特に問題はなく、持ち帰った設計データによる耐震診断もすべての項目において規定をクリアーすることができました。関係者の皆様、ご協力ありがとうございました。