港南台つぐみ団地10号棟

つぐみ団地は旧耐震マンションのため、新耐震マンションのように適合している資料等を確認することのみで適合性を証明できません。なぜなら「耐震基準適合証明」とは対象の建物が新耐震基準に適合していることを証明することになるから、そもそも旧耐震マンションでは対象にはならないわけです。壁式構造の旧耐震マンションを新耐震並みの基準に適合していることを証明するためには、普通の新耐震マンションにはない特別のプロセスを必要とします。その特別のプロセスとは「簡易耐震診断」で適合性を証明する方法です。

すべての旧耐震マンションが上記のプロセスで可能となるわけではありません。対象になるのは「5階建て以下の壁式鉄筋コンクリート造」に限ります。他の構造様式で一般的な「ラーメン構造」では対象にはなりません。ラーメン構造とは建物の構造骨格が柱と梁で構成されている構造を言います。なので一般的な(ラーメン構造)マンションではほとんど可能性はありません。

ではなぜに壁式鉄筋コンクリート造に限って耐震基準の適合証明書が発行可能なのか? それは先の「阪神淡路大震災」にありました。 全国から集められた建築士によって大震災の被害状況が調査されましたが、驚くべきことに旧耐震の建物であるにもかかわらずほとんど無傷の構造様式の建物がありました。その構造様式が「壁式鉄筋コンクリート造」の共同住宅だったのです。

この調査データを踏まえ、国土交通省が認めたのが「既存壁式鉄筋コンクリート造の簡易耐震診断法」です。クランツ事務所が扱う旧耐震マンションの耐震基準適合証明はこの診断法によって行っています。そのために構造設計図が必要で、設計図書を保管している管理事務所に閲覧の申請をして承諾を頂いて設計データを収集しています。

その他、経年によるコンクリートの劣化を確認するために、コンクリートの強度確認試験を行う必要があります。この強度試験はすべての壁式鉄筋コンクリートに課せられたものではなく、現場打の壁構造の場合に必要です。 壁式鉄筋コンクリート造には、プレキャスト壁式鉄筋コンクリート造と現場打の壁式鉄筋コンクリート造があり、プレキャスト鉄筋コンクリート造の場合では強度試験は免除されます。ちなみに「港南台つぐみ団地10号棟」は現場打の壁式構造のためにコンクリートの強度確認試験を行う必要があります。

港南台つぐみ団地10号棟の特徴

港南台つぐみ団地10号棟

今回の住宅も引き続き港南台つぐみ団地になりました。先のリポートでは7号棟でしたが今回は10号棟です。立地条件や周りの環境、建物の構造上の特徴などは同じ団地内の建物なのでほとんど一緒ですが、できるだけ端折ることなく述べたいと思います。

今回の依頼人は港南台に営業拠点を置く大手の不動産会社様でした。偶然にも7号棟の仲介会社と同じ仲介会社様でした。ただし営業担当者は別でしたが。

港南台つぐみ団地7号棟のリポートでも述べましたが、この住宅はとてもコストパフォーマンスの高いマンションだと思われます。 なぜなら築年数の経過年数が評価の大きなポイントを占めていると思われるからです。その中でも旧耐震であることがとても大きいと思われます。旧耐震の最も大きなデメリットは優遇税制(登記費用減税・住宅ローン減税・不動産取得税減税)が受けられないことによるものですが、このマンションの場合ではこのデメリットを解消することのできるポテンシャルを持っています。そのポイントが価格に反映されていない分とても割安だといえるでしょう。

その他、駅地下であるにもかかわらず広大な敷地にゆとりの間隔で建てられている解放感も魅力ですね。総合的に判断すればとても優れた物件であることは確かです。

ともあれ、設計図の閲覧承諾から現地調査、コンクリートの強度試験までスムーズに進めることができました。関係者の皆様ありがとうございました。